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6月 21, 2009

天津青年京劇団来日公演『覇王別姫』大阪公演 感想その2

その1からの続きです…

今回の公演は、通常の日本公演の形式を踏まえて、休憩を挟んで二幕構成になっていて、一幕目を王立軍が、二幕目を孟広禄が項羽を演じていました。

王立軍の覇王(項羽)は目の大きさが際立っていて、迫力がありました。王立軍は武生も老生もできる人なので、唱も高音が武生らしさがきれいに出ていて、良かったです。ただ立ち回り中心の部分を演じると言いながら、立ち回りの見せ場があまり(というか全く)なく、始まったかと思ったらそこで幕となってしまった…。

立ち回りらしき場面も「十面埋伏」の場面で旗を持って舞台上を移動することで処理していて、舞台上を旗の脇をぐるぐる回って終わり、という感じでした。日本公演にありがちな、バク転を連発するようなアクロバテックな立ち回りは珍しく全くありませんでしたが、かと言って鎧をつけた形での華やかな立ち回りも少なくて、立ち回りそのものがなかったような印象を受けました。

それ以外も前半の一幕は全体的に、始まったかと思うと、もう次の場面に進み、拍手するタイミングが取れないまま、そして場内が非常に静かな状態で舞台が進みました。あまりに静かで少し気持ちが悪かった… いくら日本でもこれは珍しいと思います。私は「みんな虞美人のきんきらの衣裳でドン引きしているんじゃなかろうか」と心配していたのですが…

拍手が起こったのは王立軍が馬丁を引き連れて立ち回りの見得をきる場面(この場面をどういうのか私は知らないのですが…)、せっかく少し盛り上がろうとしてきた矢先に終わってしまった(号泣)

休憩を挟んで始まったのは、敗戦の色が濃くなった項羽を虞美人が慰める場面です。中国で『覇王別姫』が上演されるとき、普通この場面から虞美人の死までが上演されます。(今回上演された通しの『覇王別姫』は、昔の脚本を簡潔にしたものだそうです。)

ここからは孟広禄が覇王を演じます。やはり目のふちまで真っ黒に塗っています。声もいつもの声でした。想像していたよりは違和感はありませんでしたが、少しエコーがかかるのはエコーがかかりやすいようにマイクを調整しているからか、彼の声がエコーがかかりやすい声なのか定かではありません。一度生の声を聞いてみたいものです。

ただ孟広禄が出る場面はほとんどが趙秀君の虞美人が主役の舞台なので、彼は相対的にあまり目立ちません。 趙秀君の虞美人はここでもすごく豪華な衣裳でした。ただ通常の公演の衣裳の刺繍を豪華にしただけだったので、ここの豪華さは好印象を持ちました。

演じ方も剣舞の部分も劉錚さんのようなきれいさはありませんでしたが、趙秀君は女性ですし、前半から出ているので体力的なものもあるでしょうから、合格点は上げられると思います。もっと良くなるとは思いますが、日本公演のために頑張って勉強したんだなという感じは伝わってきました。

虞美人が自害して、ラストは項羽が河を渡れなくて自害する場面ですが、これは蛇足のような気がしました。通常の公演でこの部分が演じられないというのもわかる気がします。

歌舞伎でもそうですが、通しの演目をみどり形式で一部分だけ演じるというのは、省略された部分がおもしろくないという要素もあるのだと思います。今回は通しでの『覇王別姫』でしたが、特に前半部分がおもしろくなかったですね。見せ場が全然なくてあらすじを追っているだけという印象を受けました。李左軍がちょっと見せ場を作っていましたが、あれだけの短い時間ではいくら李左軍役の廬松さんが頑張っても、見せ場というところまで持って行くのは無理があります。

観劇後、友達と感想を話していて、彼女が十年ぐらい前にやはり日本で通しの『覇王別姫』の公演があったようだが、前半部分がどんな感じだったか忘れてしまったと言っていて、私はその時は全く記憶になかったのですが、今になってみれば、確か楊赤の大連京劇団が通しで『覇王別姫』をやったような記憶があります。十年以上前の話で、関西では公演がなく、私は東京でその公演を見た記憶があります。今でもその時に見た楊赤の覇王が一番良い覇王だと思っていますが、その公演が通しだったかもしれません。でも私もやはり私の友達と同様に前半部分がどんな話だったのか全く覚えていないのです。

ネットで『覇王別姫』の脚本が何種類かの公開されているので、それを見てみたら、前半部分がある脚本はやはり今回の公演と同じような内容でした。しかしあまり見せ場がないのであれば、思い切って別の芝居を作ってしまってもいいような気もします。国家京劇院の張建国さんの諸葛亮の京劇のように、昔の舞台から見せ場のある部分を取りだして松花堂弁当のような新篇劇を作るという方法も、海外公演用の舞台としては一理あるのだということが、今回の公演を見て、よくわかりました。

今回の来日公演の陣容は非常に豪華なものです。天津青年京劇団は天津を代表する京劇の劇団で、今回の来日メンバーはオールキャストと言っていい豪華メンバーで揃えました。老生の張克や武丑の石暁亮をちょっとした端役に使ったりと、中国でもなかなか見られない、海外公演、というよりも、むしろ台湾香港マカオなどの中華圏の公演に見られるような配役に近い陣容ではないかと思いました。中国の京劇界が日本の観客を目が肥えた観客として受け止めている証左だと思い、私はこのメンバーを見たとき、とてもうれしかったのです。しかし実際の公演は、せっかくのベストメンバーを十分に生かし切れていない、もったいないものだったと思います。ここ最近絶不調が伝えられている張克が、やはり絶不調だったのは致し方ないとして、主役級の3人のうち、趙秀君以外の二人はやはり消化不良でした。AプロBプロと分けるのであれば、王立軍と孟広禄でAプロBプロにすれば良かったのです。あれぐらいの立ち回りなら孟広禄にもできるでしょう。王立軍の覇王が予想以上に良かったので、剣舞の部分を王立軍で見てみたかったと思いました。

孟広禄にはやはり一度、彼の十八番の包公を唱ってもらいたいです。そういえば先日テレビで京劇『赤壁』の舞台中継を見ましたが、孟広禄の曹操もけっこう良かったので、今度日本に来るときには孟広禄は曹操でも良いと思います。

そういえば、今回の公演は趙秀君の唱はしっかり聞かせていました。ときどき楽戯舎主催の公演は、唱の声量を抑えることがあるのですが、趙秀君はあえて小さ い声で歌おうとしていた場面は、私には感じられませんでした。ただメリハリをつけようとしていたり、ここでちゃんと唱や演奏を聴かせるぞ、としていた場面 は感じられました。ただその場面の衣裳がマツケンサンバ並のきんきらだったので、観客はみな衣裳の方に気を取られていたのではないかと、少し心配しています。(私も気になって仕方がなかった…)

今秋の東京京劇フェスティバルのことを以前に書きましたが、唱を聞かせる演目があまり来ないのが少し寂しく思いました。それを思えば、張建国さんの『三国志~諸葛孔明』五丈原の場面のように、唱を聞かせる場面を40分も続けることは、やはり異例中の異例のことだったのかもしれません。しかし、みんな感動していましたよ~

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コメント

やはり張克さん調子悪かったんですね。初めて生の舞台を観る機会だったので楽しみにしていたんですが。。。
豪華なメンバーなのに印象の薄い舞台でした。演目のせい?やはり日本では声量も抑えるでしょうし、観客のノリ(?)も違うでしょうし。
孟広禄さんの包公もの久しぶりにみたいですね。

投稿: 美美 | 6月 22, 2009 02:02 午後

美美さん、こんばんは。

印象が薄かったのは、演目のわりに豪華すぎるメンバーを生かし切れなかったせいかもしれませんね。みんな日本に来たいのでしょうねぇ… 
私はこの脚本なら趙秀君の虞美人、王立軍だけの覇王で良いと思います。王立軍がもっと見たかったです!

投稿: 紅娘 | 6月 22, 2009 11:12 午後

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